マーケット倉庫番外編「へそ石」について
2007年出品
「へそ石」をキーワードに検索をして発見したブログ、「たまーにビーチコーミング」に興奮。特に成因については、長らく「そうなのではないか」と考えていたので、大変に感激しました。
そこで、ミネラルマーケット倉庫管理者のkocteauも、房総半島で採集観察した「へそ石」についてまとめてみることにしました。
kocteauが房総で採集した「へそ石」の産地は南房総市和田町と富山町、鴨川市に安房郡鋸南町の4ヶ所である。
南房総市和田町産へそ石
南房総市富山町産へそ石
鴨川市産へそ石
鋸南町産は画像無し
産地の中で、和田町・鴨川市・鋸南町は河川の礫層中に二次的に堆積した物や、それがまた流れ出した物である。kocteuや仲間の間ではこれを「川べそ」と呼んでいる。
それに対して富山町産のへそ石は、第三紀の非常に軟質な泥岩中より産出するもので、その産出状況からへそ石の形成された状態を比較的良好に保っていると想像している。
「川べそ」とは対称的に、山の稜線に近いところに存在することから「山べそ」と呼称している。
「山べそ」の産出状況
ほぼ稜線に近いところに、土工を施した跡がある。地面に、褐色から黒色のへそ石のかけらが散らばっているところがあり、その場所を丹念に探していると・・・
チムニーの跡???
雨で洗われた泥岩が風化した表面に、所々ポコポコとした高まりがある。その一つを観察してみると中心に色が変わった部分があり、なにやらパイプの様な構造にも見える。色調から、鉄と硫酸塩の存在が暗示される。
その部分を下に向かって掘り返してみると・・・
へそ石があった!!!
更に、この場所ではへそ石に比べれば稀であるが「玄能石」の産出も確認されている。また、鴨川市でも「玄能石」が採集された。
富山町産玄能石 鴨川市産玄能石
玄能石は現在、イカ石(Ikaite)後の方解石の仮晶と考えられているものです。ロシア北東部のコラ半島などでは、海底の炭酸に富む低温湧水から生じたイカ石の、方解石に変化した物が漂着すると言われています。
へそ石=冷湧水の炭酸塩チムニー説に良く合致するものだと思います。
更に、このあたりからは海底の湧水の周囲にコロニーを形成する、シロウリガイの仲間の化石が報告されています。(1999),房総半島保田層群より産出したシロウリガイ属二枚貝,横須賀市博物館研究報告(自然科学),46,55-56
また、この付近で採集された石英脈中から、六角板状を示す結晶が見いだされ、深海底におけるSiO2鉱物の仮晶であるといわれています。(2007)千葉県南房総市荒川産仮晶石英の結晶形態について,ペグマタイト,第85号,2-7
このへそ石なんか、いかにもチムニーという感じがしないでもありません。