黄玉 Topaz 山梨県甲府市黒平 Kurobera, Kofe City, Yamanashi Pref., Chubu Region, Japan

2014年出品

大きさ 30×23×40mm

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古くより名高い「黒平のトパーズ」である。

むしろ現物を見たひとが限られるため「名のみ高い」といったほうが適切かもしれない。

松原聰著『日本の鉱物』(学習研究社、2003)等にも美麗な結晶が掲載されているが、滋賀の田上や岐阜の蛭川、苗木等にくらべ産出量がひどく限られ、主要な博物館での常設展示の機会にも乏しいからである。

本標本には来歴がある。

古物市場を経由して入手されたものだが、いくつかの状況証拠から、昭和20年代、黒平集落で水晶採掘を業としていた人から宝飾関係者に売却されたロットの一部だと推定されている。

黒平での水晶採掘で、あるガマから淡褐色で頭の形の異なる「水晶」が多数発見された。

採掘に従事していた人々が最初、あまり価値のない水晶だと誤認していたところ、黒平集落の藤原某氏が「これはトッパスちゅうてな」と言って正したという逸話が残っている。

さらにこの「トッパス」については、いちど国立科学博物館の今吉隆治氏が購入を検討したものの、値段が折り合わず購入が見送られているうち、ある宝飾関係者にすべて売却されたという話が伝わっている。

(以上は、マーケット主催の高橋が藤原氏から1985年ごろに伺った話である)。

一方、この標本を含むロットについては、古物市場に共に出た品などから、元のオーナーが宝飾関係者であることが推定され、かつ購入されたと推測される時期が先述の逸話と合致する。もとより水晶採掘業の現場でもトパーズの存在を知られていなかったことからも想像されるように、「黒平のトパーズ」の産出機会はひどく限られる。以上の論拠により、本標本が件の「トッパス」ロットの一部であることは、おそらく確定的と思われる。

鉱物標本には、科学的な価値と同時に、美的な価値がある。

さらに、骨董品的な「来歴」もまた、標本に深みを与えるものであろう。

本品は、そうした歴史的な逸品である。

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ミネラルマーケット2014は6月7日(土)10:30-17:00、飯田橋レインボービル1階にて開催です。

詳しくはサイト「ミネラルマーケット2014」をご覧ください。

入場無料。

https://mineralmarket.jp/

English page  https://mineralmarket.jp/information_e.html

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